聞き書き七ヶ浜

聞いてけさいん、話してけさいん。七ヶ浜のいまむかし。

花渕浜にまつわる「餅」と「馬」の話

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今日は12号掲載「浜のんめぇもの」の記事から一つ。

花渕浜にお住いの人から鼻節神社のお話を伺うと、必ず出てくるのが次の2点セット。

「お祭りのとき、花渕だけ餅なんだよな。他はお赤飯なのに。なんでなんだろうね」

「花渕浜は馬だね。牛を飼えない。祟りがあるらしい」

皆さん、遠いとおい昔に何かがあったような話があるのをわかってはいるようなのですが、理由がわからないまま現在に至っているようでした。他の地区の皆さんも疑問に思っていたようで、逆に「あんだ、調べてけろ」と言われてしまいました~(笑)

これはもう、七ヶ浜の昔のことに詳しい 鈴木幹生さん(花渕浜)に頼るしかないとお話を伺いましたのでご紹介いたします(^O^)/

 

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花渕の祭りはなんで「餅」?

花渕だけ「餅」。なんでかっていうとね、平安時代に遡っていくの。年号でいうと康和5年(1103)の話です。このときに、鼻節神社の社司などに禍穢(かあい)があったんだって。禍穢は、簡単にいうと神主さんが悪いことをしたので祟りが出たんです。それでそのことが都まで知れ渡った。(※多賀城国府があった時代です)

(中略)そして、神祇官を花渕に下向させたわけです。都から花渕に来たんだね(※鼻節神社が格式が高い神社なので)。(中略)従五位くらいの人を寄こして中祓いをさせたんだね。お祓いなんだけど大中小ってあって、上から二番目。大祓いの次に悪いことをしたんだね。

中祓いの罰として「神馬(じんめ)を飼うこと」。鼻節神社にいる「おづめさま」って馬のこと。これが罰。今までねかったんだもん。馬を一頭飼うってことは、エサをかせなきゃねえし、水を飲ませなきゃないの。これ大変なことなのよ。

あと二つ目は、「餅を供えなさい」ってこと。ここに餅が出てきた。おこわ(お赤飯)ではダメだ。手数の掛かる餅を供えなさい。しかも、米の餅で中にあんこを入れるっていうんだ。あん餅にすんだな、要するに。それ以来、ずーっとずっと祭礼のときは餅になってんだね。氏子さ 中祓いさせて、餅つかせんのも大変なことなんだよね。

私が想像するには、神社の宮司だけに科せたと思うのっしゃ。罰として「おまえらやれよ」と。ところが宮司もただものではねえんだね。氏子に回して、今度は村人までつけを回したと思うんだな。花渕浜の人たちは素直だから、「宮司さんがそういうんだから、餅をついてあげましょう」ってことになったんじゃないでしょうか。

聞き書き七ヶ浜12号「んめぇもの」より)

 

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鼻節神社境内に祀られている「おづめこさま(御神馬像)」。お祭りのとき、軽トラックに乗せて地区内を練り歩きます。  

実は、幹生さんへの質問は当初「餅」についてだけだったんですが、一緒に「馬」までついてきました! 元々は宮司さんへの2つの罰が村人まで巻き込んだってことなんですね。そんな謂れがあって現在に至るんですね。

「餅」は、杵と臼や機械でついていたそうですが、今はほとんどのお宅が購入しているようです。「今は買えるから。売ってるから」だそうです。餅を作るのは手間ですからね。本当にいい時代になりましたね!